人間の尊厳と緩和ケア

特定非営利活動法人びゅうは、2009年10月25日の午後、大原文化センター(芦屋市)にて、「いのちと死を見つめて:人間の尊厳を考える」というテーマでシンポジウムを開催しました。

特定非営利活動法人びゅうは、2009年10月25日の午後、大原文化センター(芦屋市)にて、「いのちと死を見つめて:人間の尊厳を考える」というテーマでシンポジウムを開催しました。

パネリストには、東神戸病院緩和ケア病棟長の大西和雄先生、同看護師長の長岡理恵子先生、京都国立病院麻酔科医師としてご活躍後、現在、静岡市で海の星診療所を開業なさっておられる小林敏信先生、オプスデイ属人区の司祭、酒井俊弘師をお迎えしました。

大西和雄先生は、緩和ケアの基本理念をお話ししてくださり、ターミナルの患者が最後まで希望を持ち続けることの大切さに触れ「私たちは患者が希望を置き換えていく過程を手助する」と話されました。長岡理恵子先生は、患者たちが必要とするのは、治療と安全性だけではなく、自分の病気に対処し残りの時間をより良く生きることができるよう手助けしてもらうこと。医療者の物的・心理的援助とともに、ボランティアが提供する様々なサービスは、患者とその家族に大きな貢献をしているということを話してくださいました。

小林敏信先生は、患者が尊厳ある生活を過ごすことができるために苦痛をコントロールするという麻酔科医としての仕事の中で出会われた患者たちから学ばれたこと、すなわち、病の中でも尊厳を保ち落ち着いた生活をし、平和に死を迎えた人たちを顧みながら、日常生活の中で、どのような考えを持ち、どのように死への準備をしていくのかということについての重要なポイントをお話しくださいました。

最後に、酒井俊弘神父様は、ターミナル・ケアには、身体的ケアと社会的ケア、そしてスピリチュアルケアと宗教的ケアが必要であると話されました。スピリチュアルケアと宗教的ケアの相違点については、前者は患者の精神的負担を軽くするための聴き相手になること、後者は死後についての患者の質問に答えを提供することであると説明してくださいました。また、私たちはお互いにこの4つのケアを必要としており、私たちは、言わば、日常生活でのホスピス状態にいる というコメントが印象的でした。

豊かな経験に基づいた先生方のお話しに、参加者は深い感銘を受け、自分の生き方を振り返り、また他の人にどのように手を差し伸べることができるのかということを各自深く考える非常に良い機会となりました。また、その場で早速ボランティアの計画が成立したという例があります。主催者としましては、このシンポジウムの実りが今後さらに生かされていくことを期待しています。

芦屋、2009年11月16日