フィリピン・ボランティアの2週間

2017年8月2日から14日まで、韓国、台湾、マカオ、そして日本からの計26名の学生や若い社会人がフィリピンで行われたボランティア・ワークキャンプに参加しました。

日本の学生たちはセイドー文化センター(兵庫県芦屋市)の寮生で、他国の学生はそれぞれの国・地域にある姉妹寮からの参加者でした。行き先はフィリピンの首都マニラ市と、セブ島にあるティンドグ村でした。

ボランティアの前半はマニラ市から始まり、4日間をかけて子ども病院やスラム街で活動する他、マニラの旧市街見学や現地の姉妹寮との交流がありました。子ども病院では、移植のため臓器提供者待ちのガンや重病を患っている貧しい患者たちを見舞い、子供たちにはおもちゃやお菓子を、そのご家族には食料品を配りました。ほとんどの子供が寝たきり状態で、幼児が大半でした。この病院での経験について神戸大学在学中の小川春樹君(22)はこう語りました。「彼らと過ごした時間はほんの数時間しかなく、僕たちの訪問は、彼らにとっても、私たちにとっても、非常に小さなことかもしれません。しかし、僕が確信していることは、不意に思い出した時に暖かい気持ちになれるだろうということです。」

ビデオ:Part 1(マニラ、6分26秒)

ビデオ:Part 1(セブ島、6分2秒)

参加者の宿泊先は、オプス・デイが精神面・霊的面の指導を担当しているサマール・スタディ・センターという学生寮でした。ワークキャンプの期間中、寮生数名が観光案内や通訳をしてくれました。

その後、メトロマニラ(マニラ首都圏)にあるタギッグ市に位置する貧者の聖母教会を訪問し、主任司祭のマルク・エマン神父から地域の現状を説明してもらった上で、参加者たちが実際に現場に赴きました。この教会のエリア(小教区)には約7万人の人が住んでおり、教会は信者たちの霊的な世話のみならず、様々な社会活動に取り組んでいます。小教区内の信者数が多く、日曜日には10回のごミサが捧げられますが、それでも教会が人で溢れるということです。この教会には、若い頃にスペイン首都のマドリードで同じく病人や貧しい人々の世話をしていたオプス・デイ創立者の聖ホセマリア・エスクリバーの聖遺物が聖堂内に安置されています。

この地域では多くの人がスラム街で生活しているため、参加者たちが最も貧しい地区の一つを選び、数百人の子供たちのためにゲームや音楽パーフォマンスを企画しました。子供一人ひとりには文房具とランチセットを配った後、少人数グループに分かれて家庭訪問をしました。各グループが10軒ほどの家を訪問し、食料品を届けて人々の生活やニーズを知る機会となりました。父親たちのほとんどは建設現場や道路清掃の仕事をしており、3〜5畳ほどの限られたスペースで生活する大家族が少なくありませんでした。マカオから来ていたマルコ・ラリコン君(20)はこれについて次のように語りました。「子供たちの笑顔は一生忘れられないと思います。というのは、いつも朗らかで歓迎してくれた彼らは、実は私たちには想像できないほどの非常に辛い生活を送っていることが家庭訪問の時に分かったのです。それでも笑顔でした。」

8月6日からのワークキャンプの後半は、参加者が飛行機でセブ島へと移動。セブ市から100キロ離れたティンドグという3千人余りの漁村が目的地でした。ここでは、約500人の生徒が在学しているティンドグ公立幼稚園・小学校で寝泊まりし、1週間のボランティア活動を行いました。

毎日のスケジュールは朝早くから始まりました。参加者たちは鶏が鳴く頃に起床し、希望者は隣りのカトリック被昇天の聖母教会での祈りやごミサにあずかってから朝食を食べます。毎日の食事は近隣の家族が作ってくれました。午前中は2〜3人組で1つの教室を担当して出前授業を行います。内容は算数や英語の他に、参加者の出身国の文化紹介や遊び。日本グループは折り紙を教えて各教室で折り紙コンテストを行いました。また、日本の学校の友人などの間で集めた寄付金で購入したおもちゃを賞品として配りました。

昼食後は作業の時間で、校長先生の希望により今回の作業は校庭に15平米のステージ(舞台)建設することでした。毎日の朝礼や文化祭で使うということです。昨年までに、同校では2つのワークキャンプが行われ、学校の外壁と門が建てられました。フィリピンの真夏の強い日差しを浴びながら、鉄筋コンクリートブロックを組み立てて、砂利やセメントで埋めてゆく長時間の肉体労働です。

放課後、校庭で生徒たちとスポーツしたり、様々な遊びをしたりしました。そして、希望者は生徒たちに村を案内してもらい、周辺の最も貧しい家庭を訪問して食料品を届けました。微々たるものでしたが、一人残らず大喜びしてくれました。多くの村人は漁師ですが、単身赴任でフィリピン国内外に出稼ぎに行かざるを得ない人も少なくないようです。

ワークキャンプの期間中はちょうど、カトリック教会の「聖母の被昇天」の祭日である8月15日の前だったので、被昇天の聖母が保護聖人であるティンドグ村では、祝日の1週間前から「聖母のフィエスタ(お祭り)」が毎晩中央広場で行われました。音楽や賑やかな芸術パーフォマンスがあり、ワークキャンプ参加者の何人かは審査員として協力しました。この村ではフィリピン人の信仰心や聖母信心が際立っており、平日のごミサでも教会の聖堂内に入り切れないほどの参列者でした。

夜は、シャワーがなかったためバケツで身体を洗い、学校の1つの教室と同校の教員宅の部屋を借り、床で雑魚寝しての毎日でした。雨期でしたから、真夜中は毎日豪雨。

作業が終わり、参加者たちはセブ市に移り、スグブ・スタディ・センターというオプス・デイの学生寮で現地の大学生たちと交流し、観光しました。フィリピン諸島でのキリスト教宣教はこのセブ島から始まったため、敬虔な信者が集まっており、歴史の面でも宗教の面でも興味深い地域です。セブには例えばサント・ニーニョと呼ばれる聖なる幼きイエス教会があり、参加者たちも巡礼に訪れました。

ワークキャンプを振り返ってマカオの高校生のヘンリー・チョイ君(18)は次のように感想を述べています。「モノがもたらしてくれる幸せはあまり長持ちしないようで、幸せというものはある意味単純なものですね。しかし、物質主義社会はそれを理解できないでしょう。」

参加者たちは写真を見て様々な思い出を巡らせながら、マニラやティンドグでの貴重な経験から学べた奉仕精神をいかに日々の生活で活かし続けていけるかを考えつつ、それぞれの国に帰ってゆきました。「地上に存在する大きなものはすべて、その始まりが小さかったことを忘れてほしくない」(聖ホセマリア・エスクリバー『道』821)


※セイドー文化センターは一般財団法人精道教育促進協会によって運営されている男子学生寮(facebookリンク)で、オプス・デイが精神面・霊的面の指導を担当しています。国内外ボランティア・ワークキャンプや社会福祉活動は、寮生たちが立ち上げた「VOLO学生社会貢献プロジェクト」(facebookリンク)という団体が毎年企画・実施しています。